社員インタビュー No,1 “常識と美意識で、新しいデザインをつくる”
新卒でアコーダーに入社し、5年目の永井さん。芸大ではファッションデザインを学んでいましたが、就職を機にグラフィックデザイナーに転身。
なぜ心境の変化が起こり、その後どんな変化を繰り返してアコーダーの制作部の主軸に成長してきたのか。今をどう捉え、未来を切り拓こうとしているのか。
そして、なぜデザイナーにとって常識が大切と考えているのか。普段は同僚のライターが、インタビュアーとなって半生を掘り下げてみました。
幼い頃からずっとデザイナーになりたかった
ー デザインに興味を持ったきっかけから教えてください。
幼い頃からとにかく絵を描くのが好きでした。幼稚園から通っていた絵画教室で中学生に「スゴいね」と言ってもらえたり、小学校でも先生が褒めてくれてたり。
周りの人が評価してくれることで、自分は絵を描いたり何かを作ったりすることが得意なのかも、と自覚していきました。
ー いつ頃からデザイナーになりたかった?
小学1年生のときにデザイナーという職業を知って、まずその響きが単純にかっこいいと思いました。
「家にあるインテリアもデザイナーが作ってるんだよ」と大人が言っているのを聞いて、幼いながらに「職業にできるんだ」「それでお金をもらえるんだ」って。デザインすることが職業になると知って、すぐになりたいと思いました。
デザイナーになるために一直線だった高校時代
ー 中学や高校でもずっとデザイナーになりたいと思ってた?
デザイナーになりたいという気持ちに迷いはなかったです。そのためには芸大に入らないといけないし、受験対策ができる高校に行かないといけない。そう思い、地元・香川県で美術科がある高校に通いました。
高校入学後はデッサン、水彩、油絵、アクリル、彫刻、美術史など、美術の基礎を一通り学び、ひたすら描写のスキルを磨きました。国公立の芸大を目指す学科だったので、美術以外の勉強も多かったですね。
基本的には夕方までカリキュラムがあるので、終わった頃には部活も終わっているような時間でした。芸大受験のために、夏休みに東京の予備校に泊りがけで行ったこともありました。
当時から雑誌をよく読んでいて、ファッションに興味があったこともあり、高校3年生からはファッションデザイナーを目指すようになりました。
大学ではファッションを広く発想し、感性を磨いた
ー 芸大ではどんなコースに進みましたか?
京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)の空間演出デザイン学科・ファッションデザインコースに入学し、ジュエリーを専攻しました。
空間演出デザイン学科って聞いて、具体的に何を勉強するのか、正直よくわからないですよね。空間って建物の中のことだけじゃない。例えば公園も空間と言えますよね。つまりこの学科では世の中の全てがデザインの対象なんです。自分がそれを作る理由さえあれば、どんな対象のものを作ってもいい。
制作した作品のコンセプトを教授やみんなの前でプレゼンして、その理由に共感が得られたら、なお良いねみたいな。デザインというものに触れたばかりのときはとにかく広く発想することを大事にして、そこから自分にとって最適なアウトプットを選びましょうというような考えだったんだと思います。
ー そこでどんな活動をしていましたか?
大学4年間は、もう毎日本当に忙しくて…学校で与えられる課題だけではなく、さまざまなことをやっていました。デザインを考えて作ってそれを展示・販売したり、仕事として町おこしのプロジェクトに参加してカフェや商品を企画したり…
高校までは、ひたすら基礎をインプットしていたので、これからは自分で発想して、デザインできるということが本当に楽しくて…寝るのが勿体無いって思うくらい本当にずーっとデザインに没頭して4年間を駆け抜けていきました。
自分に与えた大学院でのブランド研究の時間
ー 充実した大学4年間の後の進路はどうすることにしたの?
大学時代は毎日たくさんの課題に追われていて、それはとても良かったのですが、私としては一つ心残りがありました。自分でブランドを立ち上げてみたいという一つの夢が実現できなかったことです。
そこで、大学院に進学し、この2年間を自分の夢のために使おうと、ブランド活動を行うことにしました。まず、ジュエリーを中心とした商品を作り、ホームページ作成サービスを使ってブランドサイトを制作しました。
そのほかにもカタログ、写真集、DM、雑誌など、ブランドを立ち上げるときに必要な販促・広報ツールとして思いついたものを全部作ってみました。また、自分のブランドを世の中にどう打ち出していくべきか、といったこともいくつかの論文にまとめました。
ー ブランドをやってみた感想は?
実際にブランドを立ち上げてみると、見えないところに届けることの難しさを痛感しました。例えばSNS広告などを打っても、簡単には広まっていかない。
自分が価値があると思うものを、伝えたい人に広めたいだけなので、バズりたいわけではない。「伝える」ことはできるけれど、自分の想いが「伝わる」というところまで行くのはすごく難しいなと…
そうやって自分自身のブランドの販促や広報に関する媒体をたくさん作っているうちに、それを作ることが商品を作るのと同じぐらい楽しくなっていきました。
ジュエリーからグラフィックの業界に転向
ー それで今の仕事であるグラフィックデザインに興味を持ち始めた?
そうですね。商品を作ることとそれを伝えるためのブランディングについて深く考えた時期があって…
例えばジュエリーでも洋服でも、自分発信の商品を作るのって、誰かのために作ってはいるけれど、見えない人に向けて作っていて、正直独りよがりな部分があるなあ…と思うようになりました。
今、世の中の人がどんな想いをしていて、何を求めているのか知らないのに、誰かのために何かをデザインすることが本当にできるのだろうか。
伝わらないことを嘆くのではなく、まずは、世の中のことをもっと知らないといけない。世の中の常識を知った上で、デザインを作るべきだと。
大学院でやってみたブランド活動の中で制作した、販促や広報のさまざまな媒体は、自分の想いを誰かに届けるためのものでした。では私のやりたいことはグラフィックデザインでも達成できるのかも?と感じ始め、グラフィックをもっと知りたいという思うようになりました。
ー そこから就活はどのように行ったの?
グラフィックデザイナー志望で就活を行いました。
デザイン事務所を選ぶ際、本当に社会のためのデザインをしている会社を選びたいという思いが強くありました。そこでいろいろなデザイン会社のサイトを見ましたが、アコーダーの実績を見ると当時BtoBの事例が多くあがっていました。
それを見て、この会社は世の中の企業のためにパンフレットやWEBサイトを作っていて、本当に直接的に社会に役立つものを作っているように感じました。
また、事例と面接で訪問した際の会社の雰囲気がしっかりマッチしていて、すごく真面目な会社だなと…それがいいなって。これが会社というものなんだって。
しっかりしたデザインを作る=こういう現場で働かなきゃいけないんだ、とすごく納得したというか、しっくりきたんです。デザイン、空間、人、全部がマッチしていてそれがよかったです。
ー ポートフォリオはどんな内容でしたか?
デザイン会社ってすごく忙しいイメージがあったので、ポートフォリオを読む時間なんてないんじゃないかと思い、まず初めに文字のない20ページほどの写真だけのポートフォリオを履歴書とともに送りました。
もし時間があれば読んでいただけるように、袋とじにした面に文字を入れ、当時ジュエリー専攻で培った金属加工の技術を活かし、自作のペーパーナイフ作り、本の中に忍ばせました。
その後、面接に進んだ際には、200ページほどの本物のポートフォリオを持っていきました。当時面接を担当してくれた上司も面白がってくれたんじゃないかなと思います。
ー 実際に働いてみてどうでしたか?
働く前からの印象通り、初めはとても厳しく感じました。クオリティーの高いデザインがスッとできるようにならないとアコーダーのデザイナーとしては生きていけないんだなと思い、必死に食らいついていました。
でも今ではデザイナーとして、会社の制作物のクオリティーを維持する側の立場になることができ、さらにはアコーダーの今後を考えた動きをしています。
印象としてはみんなここまでやって当たり前、というような大前提の基準が高いように思います。社内でさまざまな部署の方々と接している中で、精度の高いデザインを作ることに対する共通意識が高いのでそれが居心地がいいです。
なのであんまりみんなのんびりはしていないかもしれませんね。デザインはもちろんのこと、仕事上のやり取りや、デザインだけでなくそれに付随する画像加工などの作業も然り。細かなところまで全てちゃんとやる。それぞれの役割におけるプロ意識が高いと思います。
早い段階でメインで案件を担当
ー 新卒で初めて携わった仕事は?
アコーダーの新人グラフィックデザイナーはまずこれをやるという仕事があり、出社初日にそのクライアントのチラシを制作しました。
ある機械の宣伝チラシでしたが、ターゲットとしてはその機械を使っている中小企業の町工場の方で、その方達に届くようなデザインというのがご要望でした。
もちろん、そのようなデザインを作ったこともなければ見たこともなかったので、これまでにアコーダーで制作した事例を端から端まで全部見て、なんとか真似して作りました。
当時のディレクターは、私に対して、デザイナーとしての技術面も、お客様とのコミュニケーション面も両方できるように育てていこうという方針でした。そのため入社して1ヶ月も経たないうちに、あるハウスメーカーさんのA1パネルの制作を担当しました。
ディレクター、進行管理の担当者とともに打ち合せにも同席しました。それまでその案件は、数名のデザイナーが参加していましたが、当時は社員みんなが深夜残業しているような状態。
そこで、私一人で担当することになりました。その時はとても大変に感じましたが、今思うと、初めから責任の重い仕事からスタートできてよかったと感じています。
ー 新人のときに一番大変だった仕事は?
今でもそのハウスメーカーの案件が一番大変だったと思っています。
一番難しいと感じたのがサイズです。A4チラシもまともに作ったことがないのにA1パネルを作るって…A4チラシ8枚分を同時にデザインしていくような感じで、やってもやっても終わらない感覚でした。しかもパネルは数枚作らないといけなくて…
デスクトップ画面の中であんなに大きなA1パネルを作るというのも難しかったです。新聞のように並んだ専門用語ばかりの原稿を自分で読み解き、デザインに落とし込まないといけなかったため、ハウスメーカーの専門的な知識も調べて理解しつつ、情報を整理し、制作していました。
一人では到底できなかったため、当時のディレクターの方、進行管理の方に大変助けていただきました。このときにグラフィックの本当に基礎の基礎といった部分を一通り知ることができた気がします。
ー ミスもありましたか?
既に印刷が終わった制作物に対して、ディレクターの方に間違えている箇所を指摘されて…
私が間違えたことで、外部に支払うお金が倍かかっている、つまり会社の利益が減っている、ということを説明されました。その事実にすごくショックを受け、責任を感じたのを覚えています。これをきっかけに、校正に関してとても細かくシビアになりました。
スイーツのブランディングを担当
ー 最近の仕事で自分の強みが発揮できたと思う案件は何ですか?
普段ディレクターが担当するような、企画書の制作やデザインの方向性を決めるといった仕事も率先してやり始めていた4年目ぐらいのときに、あるスイーツのブランディングを担当させていただきました。
商品とともにデパートの店頭に置かれたり、商品を購入者のもとに発送される際に同梱される小さな冊子で、ブランドブックのような内容です。その仕事は思い入れも強かったですし、出来もかなり納得しています。
素材が良く、それなりに価格の高いスイーツのため、高級感のある路線で、でもゴージャスとかではなく、繊細なエレガントさを求められるような、そんなデザインの方向性でした。
ー 永井さんの担当は?
進行管理2名とアートディレクター1名と、私の4名でチームを組み、私は企画書からデザイン、プレゼンまでを担当しました。
先方の社長様とプロジェクトチームの方々7名ほどに直接プレゼンさせていただきました。そこまで一人でやらせていただけたのは初めてでしたが、手応えのあるデザイン、打ち合わせとなりました。
ー どういったプレゼンをしましたか?
まず、作成した資料をもとにヒアリングを行いました。素材の良さが伝わるデザインということは当たり前ですが、プラスアルファ何を重要視するかということを聞き出すことが目的でした。
- A. 健康や環境に対する考え方を視覚的に伝えるデザイン
- B. 高級感のあるデザインでご褒美感を演出するデザイン
- C. 高級感だけではなく手に取りやすさも重要視したカジュアルな雑誌系デザイン
- D.イラストを使って目を引くことを重要視した少しポップなデザイン
この4つの方向性で資料を作成しました。
直接お話し合いをさせていただいた結果、「手に取りたい」も大事だけれども、方向性としてはAとBの方向の高級感路線でいきたい、というようなお返事をいただきました。
ー こういった案件はかなり得意分野だった?
自分が普段から得意としているデザインのテイストだったのと、自分が消費者(冊子のターゲット)にもなり得る案件だったので、この冊子を受け取ったときにお客様が、どう思うかが想像しやすかったです。
BtoBの案件を数多く制作させていただけたおかげで、デザインの基礎がしっかり身についたからこそ、今はBtoCの案件が得意になっていると感じます。
デザイナーの言葉、自分の言葉で伝える
ー 永井さんが大事にしてることはなんですか?
私が普段、個人的に大切にしていることは、「自分の言葉で伝えること」です。
打ち合わせなどでの言葉のコミュニケーションもそうですし、お客様に見せるための資料や企画書などのコミュニケーションツールにおいても同様です。
例えば構成案の中に、ここにこういう文字を入れてください、ここにはこういう内容が入りますなどの記載をしますよね。そのときに理由も書きますが、なぜこのスペースにこの内容を入れたいのか?できればこういう内容にしてほしいのか?など、その理由を伝えるときに、デザイナーの気持ちがお客様にグッと伝わる、そんなふうに書けたらいいなと思ってるんです。
自分の言葉で書くことで、私は担当者として、真剣にこの案件について深く考えていることを知ってもらえるきっかけになる。そういうときの言葉って、デザインを理解してもらうための言葉なのでモヤモヤしていることが多いんですけど、ちゃんと言語化することが大事だと思っています。
進行管理の方が話す言葉は、お客様に信頼感を感じていただくための言葉。そこはプロである進行管理の方にお任せして、自分はデザイナーとしての言葉を喋ろう、そう意識しています。
でもそれが専門的すぎてお客様に伝わらなくては意味がないので、自分らしい言葉なんだけれど、お客様にも伝わる、理解してもらえる言葉を使うと言うことも考えています。
アコーダーの1年先の未来を考える
ー これからアコーダーでどんなことをしていきたいですか?
ブランドのデザインを統一するために、私がグラフィックデザインを担当した案件した流れで、WEBデザインも何度か担当しました。
今後はWEBの専門知識も身につけていき、グラフィックもWEBもマルチにできるデザイナーになりたいですね。できれば1年未満でそうなりたい。
でも正直、自分のことはあまり考えていないんです。やることやってるから、なるようにならない訳がないみたいな。
最近は、会社の今後のことで頭がいっぱいです。アコーダーがこれからも成長していくためには、どうしたらいいのか。私の役割は制作部の現状の仕組みを見直すことかなと思っています。
経営方針が固まり社員が増加していく中で、制作フローの標準化や、新入社員でも制作上のルールがわかりやすく確認できるシステムを作ることなど、やらなければならないことはたくさんあります。今のうちに課題を一つずつ解決しておきたいと思っています。
アコーダーの領域を広げる
ー 3年後、5年後のイメージありますか?
今の私のポジションであれば、みんなアートディレクターを目指す、ということになると思うんですが、私はアートディレクターになりたくないんです。元々デザイナーという響きに惹かれて、デザイナーになりたいと思ったので。
デザイナーっていう肩書きが好きなんです、すごく。職人っぽいイメージが好きなのかもしれないです。実際には、アートディレクターの動きは、仕事としてやってはいるのですが、肩書きだけはずっとデザイナーがいいと思っています。
領域を広げるという点では、将来プロダクトなども自社でできたらいいですし、店舗の空間デザインなどもやりたいです。私というより、会社の領域になってくるかもしれないですね。
アコーダーでずっと模索している未来投資事業の部分になってくるのかもしれません。デザインという切り口でもっと幅広く、いつまでもデザイナーとして色々なものをデザインしていたい。
ゆくゆくはプロジェクトチームを作って、そのメンバーで、一つの会社のあらゆるものの制作を任せていただけるような、そんな仕事をしたいです。
ロゴ、会社案内、コーポレートサイトだけでなく、空間デザインなども制作し、ブランドに関連するすべてのものをプロデュースするみたいなことができたら理想です。
デザインは世の中の唯一のユーモア
ー 永井さんにとってデザインとは何ですか?
幼い時にデザインって仕事になるんだと初めて知ったとき、多分デザイナーの仕事をちょっと軽く見ていたんです。
そう思っていた理由が、プロダクトでも広告でも、デザインっていうことを特に意識するまでもなく、いつの間にか誰かがやっているものだと思っていたので。
だから、あるとき、そこにデザイナーっていう人がいて仕事として関わっていると気づいたとき、デザインを仕事としてずっとやっていていいんだということが嬉しかった。
だから逆に言えばデザインって一部の人にとっては必要のないものでもある。でも、それでもなぜ必要かというと、基本的にみんな生きづらくて、なにか息抜きみたいなものを求めいるから。
そんな生きづらい社会の中で存在する数少ないユーモアみたいなものが、デザインだと思います。唯一、遊び心を発揮してもいいし、ちょっとだけ居心地を良くしてくれるものでもある。
でも居心地の良さは人によって違うから、その人や会社に合ったデザインをするっていうことなんだと思います。それによって、その会社の人たちが働きやすくなったり、生きやすくなったり、嬉しくなったり、ちょっと誇りに感じれたり。そういうことが起きたらそれはいいデザインが作れたってことなんだと思います。
ブランディングって会社の空間全てって捉え方じゃないですか。だから私たちの作るものって本当にすべてを担っていて、誰かの居心地が良くなるものであれば何を作ってもいいんだと思います。
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